【医療者向け 解説】我愛羅「砂瀑送葬」のやばさ

実際には出血性ショック外傷性窒息の両方の要素があり得ますが、今回は外傷性窒息に絞って説明します。

外傷性窒息(traumatic asphyxia)

  • 稀な外傷で、主因は胸腹部への強い外力による急激な胸腔内圧上昇。典型像は**顔面・頸部のチアノーゼ、上胸部のうっ血、結膜下出血・点状出血(Perthes徴候)**だが、すべてがそろうとは限らない[1][2][3]。
  • 臨床的印象として、体表の明らかな致命的損傷に乏しいのに重篤化・死亡し得る。報告でも致死的損傷が画像で明確に示れないことがある[1][3]。
  • 群衆事故(クラッシュ)では、死亡原因の多くが圧迫性(圧縮)窒息で、いわゆる「踏みつけ」よりも胸郭が拡張できないことが致死に直結する[4][5]。

私見

多く経験したことはありませんが、不思議な外傷という印象があります。具体的には、見た目に死に至る派手な外傷がなく画像でも同様に致死的損傷が目立たないという点です。正直、外科医としてできることは限定的で、迅速な救出通常どおりの蘇生が大切だと思います。雑踏にはいかないという予防も大切だと思います。


参考文献

  1. Eken C. Traumatic asphyxia: a rare syndrome in trauma patients. Int J Emerg Med. 2009.
  2. Karamustafaoğlu YA. Traumatic asphyxia. Ulus Travma Acil Cerrahi Derg. 2010.
  3. Jobé J. A fatal case of Perthes syndrome. Forensic Sci Int. 2013.
  4. Nolan JP. Compression asphyxia in crowd disasters: lessons from the Hillsborough Stadium disaster. Emerg Med J. 1997.
  5. Liang H. The Seoul Halloween crowd disaster: mechanisms of injury and public health implications. Prehosp Disaster Med. 2024.

最終更新日:2025年10月13日

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