これでわかる輸血:赤血球・FFP・血小板(+緊急時のO型)
**注意:**実際の輸血は医療者の判断で行います。ここでは仕組みをやさしく解説します。
輸血は“3つの部品”に分けて考える
- **赤血球(RBC):**酸素を運ぶ主役。貧血や大量出血で使う。
- **新鮮凍結血漿(FFP):**凝固因子(血を固めるタンパク)が入っている。出血が止まりにくいときに使う。
- 血小板(Plt):血の“のり”。数が少ない/働きが悪いと止血しにくい。
1回の献血から、これらを分けて複数の人に届けます(=「1人の献血で最大3人を助けられる」の由来)。
輸血の際に血液型合わせの基本(超ざっくり)
- **ABO型:**A/B/AB/O
- **Rh(D)型:**陽性(+)/陰性(−)
- 病院ではまず 「タイプ&スクリーン」(ABO/Rhの確認+不規則抗体の有無)を行い、交差適合試験で「その人に安全か」を最終確認します。時間は状況にもよりますが検査検体を提出する所から考えると 1時間程度はかかります。
- ものすごく急ぐ外傷では、これらの検査を省いて輸血を行う事があります。
- もちろん検査をしないリスクはあり、本当に必要な時のみです。
外傷の“やばい時”はどうする?
赤血球
- 多くの施設で、成人男性や妊娠可能性が低い患者には O型Rh陽性(O+) を先に投与します(在庫が多く供給が安定)。
- 妊娠の可能性がある人(特に若い女性)には O型Rh陰性(O−) を優先(Rh感作を避けるため)。
- 患者の型が判明したら、速やかに型適合血へ切り替え(例:A型の人にはA型を)ます。
FFP
- AB型の人のFFPがどの人にも投与しやすいとされており、使用される事が多いです。
- ただし施設運用により在庫やルールが異なることがあります。
- また、FFP製剤は通常は凍っているため融解に20分程度かかることに注意が必要です。
血小板
- 一番最初に使う輸血製剤ではない(基本的には一番最初はRBC)ため、外傷の緊急時に検査なしで使用することはほとんどありません。
まとめ:まずは命を守る(O型RBC投与) → 安全が確認でき次第、患者さんの型に合わせて切替。
どのくらいのバランスでいれるの?
- 大量出血時は **“バランスよく”赤血球:FFP:血小板 ≒ 1:1:1 などの比率”を目安にスタートし、検査や出血状況に合わせて調整します。
保存期間と“弱点”
- 赤血球:冷蔵で最大42日。長く置くとカリウム上昇や機能低下が進む。
- FFP:凍結で約1年(解凍後は短い)。
- 血小板:常温・振とうで5–7日。3つの中では最も貴重。
よくある質問(かんたんに)
- Q:O型なら誰にでも安全?
A:完全に“安全”ではありません。 事前検査で見つからない不規則抗体などの問題があり得るので、緊急時の橋渡しとして使い、判明次第すぐ適合血へ切り替えます。 - Q:輸血は副作用ある?
A:あります。 発熱・アレルギーから、稀に重い合併症まで。必要性とベネフィットが上回るときに実施します。
一言まとめ
- 赤血球=酸素運搬/FFP=凝固因子/血小板=止血の“のり”。
- 緊急時では、まずO型RBCを使って命をつなぎ、すぐに型適合へ切替。
- 献血は常に必要。 あなたの1回が、複数の命を助けます
外傷外科医からのメッセージ
- 輸血は外傷診療とは切っても切れない重要なものです。外傷診療を行うにあたり、院内の輸血体制の整備は非常に重要です。すべての病院で、迅速に輸血が行えるわけではないことは注意が必要です(輸血のストックが少ない事も多々あります)。また輸血自体は直接的な止血ではないため、他の止血手段を行わなくて大丈夫なのかしっかりと検討する必要性があります。