手術の際に使う基本の「武器」

今回は、手術で使う道具(=武器)について、代表的なものを紹介します。実際にはもっと多くの道具がありますが、ここでは「手術をしたら必ず使う」レベルの基本アイテムを厳選して解説します。


メス

外科手術といえば、やはりこれ!というくらい象徴的な道具です。
ドラマなどでは「メス!」と声が飛ぶシーンが有名ですが、実際の現場では「メスお願いします」など、もう少し丁寧な言い回しが多いです。

メスは主に皮膚を切開する最初の場面で使用されます。表皮と真皮だけを切り、脂肪組織には入り込まないようにまっすぐ切るのが理想で、実はこの「最初の一太刀」が案外難しいものです。メス捌きで術者の技量がわかる、というのもあながち間違いではありません。


電気メス

メスとは異なり、電流で発生した熱を使って組織を切断する道具です。凝固による止血も可能なため、皮下脂肪や内臓の止血など幅広い場面で使われます。ただし、広範囲かつ大量出血の止血には不向きです。


クーパー

医療用のはさみの一種です。やや硬めの組織を切る場面でよく使われます。似た道具に「メッツェン」がありますが、クーパーはよりしっかりした作りです。


メッツェン

こちらも医療用のはさみですが、クーパーより先端が細くシャープで繊細です。細い血管を結紮した後に切るなど、より精密な作業に向いています。


ケリー

組織を剥離したり持ち上げたりする際に使う道具です。剥離した組織をケリーで持ち上げて、下の組織を切らないようにメッツェンで切離するなど、よく使われます。


冗談のようですが、実は「手」こそが最高の手術道具です。
結紮(糸で結ぶこと)や剥離(組織をほどくこと)を高い精度で行えるうえ、メスやはさみのような鋭的な器具に比べて、損傷したくない組織を傷つけるリスクを減らせます。熟練した外科医は「手」を最大限に活用して、より安全で確実な手術を行います。

漫画『ゴッドハンド輝』でも、主人公・輝とライバル外科医・四宮が剥離技術を競うシーンがあり、最終的に「手が最も万能な手術道具である」という結論にたどり着きます。この描写は、外科医の視点から見てもかなりリアルです。


まとめ

手術道具には数えきれないほどの種類がありますが、ここで紹介したものは、外科医であれば誰もが必ず使う基本アイテムです。器具の特性を理解し、必要な場面で正しく使うことが、安全で質の高い手術につながります。

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